第三期生

岩崎 悟いわさき さとる

情報科学研究科 情報数理学専攻

大阪大学工学部出身

インタビュー

子どもの頃から数学が好き

「幼稚園に入る前から、5歳年上の姉の算数の問題に、めっちゃ興味を示していたそうです」。抽象的で、かつ普遍的なものを扱う世界に、そのころから惹かれていたらしい。子どもの頃から、ずっと数学が得意だったそうだ。「先天的に数学好き、という人と、どれだけやっても『受け付けへん』という人がいるという説があって、自分は“好き”の方だったんですね」。

大学の学部は理学部の数学科か、工学部の応用自然科学科か迷って、数学を活かす選択肢が多そうだと思い、後者を選んだ。

応用数学者として

学部3年生の時、もっと純粋数学に近い内容をやりたいと、情報科学研究科の八木厚志教授(当時)に相談した。「多くの数学のベースになっている学問だから勉強しておくとよいと、『測度論』を薦めてもらいました。その頃授業でやっていた応用の物理学や化学に出てくる数式も楽しいと思っていましたが、測度論でより純粋な数学に触れて、改めて数学っておもしろいな、と思いました」。

HWIPの活動では、融合研究でナノマシンを使ったドラッグデリバリーシステムの研究に参画している。ドラッグデリバリーシステムを表す数理モデルをもとに、数学的な観点から、対象となるドラッグデリバリーシステムの持つ特性を探っている。

数学は、物理学などの実際の自然現象を扱う学問と密接にかかわって発展してきた側面も持つ学問。応用数学の研究者としては、ロボット工学や生物分野など、異分野の学生と一緒に学べるHWIPは、数学がこれから発展すべき方向を見出す好機にもなると考えている。

生物の頑強性を定式化したい

応用数学者として、自然現象の本質的な部分を抽象化して数式で表現すること、あるいは数学モデルから新たな情報を引き出していくことに魅力を感じている。ただ、現実世界には本質的なものだけで成り立っている現象というのはなかなかなく、ほとんどの現象はある種のノイズを含んでいる。現実世界の現象を、ノイズを含んだまま数学的に厳密に扱うのは、現段階ではすごく難しいという。「現実世界は、数学で扱うには“汚すぎる”面がありますから。でも、ノイズが入った実現象を数学で扱うための土台を、一つひとつ積み上げて、最終的にはノイズが入ったものを扱えるようにすることが、数学者として一番やりたいこと」と話す。

目指しているのは、生物のロバストネス(頑強性)を数学で扱うことだという。例えば人間の指紋やキリンの縞模様は、指紋や模様が全員に生じるということは共通だが、それぞれの形は少しずつ違う。「このように、本質的なルールは同じだが、観測される結果に微妙な違いがある現象を、ノイズを含んだ偏微分方程式で扱う方法を発展させていきたい」。現在の研究テーマはまだ、その最終目標に向けたほんの入り口だが、10年20年といった長いスパンで、目標に向けた自分なりの研究のビジョンを描いている。

「生物のロバストネスを数学的に扱うための土台をつくって、この分野を研究する人がみんな、自分の研究成果を引用してくれるような、これがなければ前に進めない、というような名前が残る仕事をしたい」と話す。

2017年7月インタビュー

この機会をしっかりと利用すれば、柔軟な発想を得るヒントになる。

Q プログラムに応募した動機は?

私は修士課程に進む段階から博士課程に進みたいと考えていました。しかし自分の研究だけに集中しすぎることにより視野が狭くなり、それが理由で柔軟な発想ができなくなる可能性を危惧していました。そのような時に本プログラムの存在を知りました。他の研究科と交流・融合研究を行う機会を得ることにより、広い視野を得ることができると期待して本プログラムに応募しました。

Q プログラムの魅力は?

普通に博士課程に進むだけでは経験できないような、異分野や企業との交流の機会が得られることが良いことだと思います。そのような機会をしっかりと利用すれば、柔軟な発想を得るヒントになると思います。しかし、受動的な立場でいるだけでは得ることも少なく、能動的な立場で参加してこそ得るものが多いので、一歩を踏み出す勇気は常に必要とされている気がします。

Q 将来の夢・目標は?

私は数学に強い関心を持って研究を行っています。実現象を数理モデルで表現することによって、後は純粋に数学の世界でその数理モデルを解析できます。そしてその結果を実現象の分析に利用することができます。本プログラムでこの「実現象と数理モデルの繋がり」を多く感じることができると思っています。私はその経験を活かして将来は研究職に就きたいと思っています。まだ原因の判明していない実現象に対して、数学を用いてアプローチできる研究者になりたいと思っています。

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