Category Archives: 情報科学研究科(教授)
村田 正幸 教授
清水 浩 教授
(プログラムコーディネーター)
尾上 孝雄 教授
既存のカリキュラムではできない人材育成を
本プログラムは、いろいろな分野で活躍できるリーダーの育成を目指しています。そのイメージは「自由に領域を移動しながら柔軟に研究し、新たなモノやサービスを生み出す人」。例えば情報系でベンチャー起業する人が、生命科学や人工頭脳にも精通していて、生命、ロボットのフレーバーを備えた製品、サービスを生み出す、というような感じですね。今までの、自分の専門分野だけを深めるように設計されたカリキュラムでは、そのような人材育成はなかなか困難でした。
このプログラムでは、多様な専門分野の研究者にもまれながら、柔軟な実力を身に着けるため、3年次以降に国内外、企業や研究施設へのインターンシップを準備しています。
学生と共にプログラムを成長させる
このプログラムでは、1年次に合宿や研究室ローテーションを通じて異分野の基礎に触れ、2年次は1年次の発展形として、異分野で「自分の考えを形あるものに」する、3年次からは国内外でのインターンシップなど、学外での活動を増やす。と少しずつ自身の裾野を広げていくカリキュラムが設けられています。
自分の専門分野を持ちながら、新しい分野に飛び込めるチャレンジ精神を培うこのカリキュラムで、人間としてのスケールの大きさも身につけてほしいですね。
プログラムを一緒に良いものにするため、学生の皆さんからどんどん要望を出してほしいし、そこからまた新しいことを始めていきたい、と考えています。
融合研究への期待
ロボット研究はもともと情報科学とつながっていますが、私たちの情報技術を使うことで、ロボットの耳や目などのセンシング機能がさらに一歩進むのではないかと思います。
また最近、脳の情報処理を模したニューラルネットワークの考え方を進めた「ディープラーニング」という技術が出てきました。これにより、データ検索機能が格段に向上しています。こうした技術も、「多様な画像情報から意味のある情報だけを抜き出す」など、今後のロボットに必要な機能の向上に役立つのではと考えています。
井上 克郎 教授
オープン化の功罪
非常に複雑で高機能なソフトウェアも、無料でソースコードが公開され、自由に利用することができる世の中になりました。しかしバグやセキュリティ欠陥、剽窃、ライセンス違反などの課題も簡単に広まることになり、規律あるソフトウェアのオープン化が望まれる時代になってきています。
複雑なソフトウェアのエコシステムを解き明かす
オープン化されたソフトウェアは、多くの人々にコピーされ、改変されて、あるシステムに再利用されます。やがてそれらは、また、別のシステムに再利用されることになります。このような循環は生物の発展、進化とも関連するもので、共通する概念で説明できる部分が数多くあります。
生物界の知見をも取り入れつつ、ソフトウェア間の複雑な関係を解き明かすことを日々行っています。
情報科学の真髄とか
情報科学は、数学、論理学、言語理論、電気電子工学などを基礎に発展してきました。これらの基礎をしっかり吸収するとともに、現代社会が直面しているいろいろな課題を解決するための知識を獲得することが、大きな成功には必須だと思います。生命科学や認知科学の学習は、問題は何かという視点を得るために非常に貴重な機会です。
下條 真司 教授
「うめきた」に産学連携施設を開設
このオフィスは、「うめきた」にある大学や研究センター、企業の共同研究室です。「なぜこの立地なのか?」というと、それは「オープンイノベーション」という考え方に基づいています。1つの研究室、大学、企業だけでは困難な研究も、集まればできることがある。したがって、研究のオープン化はイノベーションを生み出す土台になります。
また、このオフィスでは一般の人々との交流にも力を入れています。建物の2階には、阪大をはじめ各大学、各企業の研究紹介コーナーがあり、一般の方々に見てもらえるようになっています。見てもらって疑問や感想をいただくことで、知見が集まると考えています。もちろん、学生にもどんどん来てもらいたいですね。
写真で紹介しているのは、複数のディスプレイを連携し、高松塚古墳の壁画を拡大して観察できるシステムや、バーチャルリアル体験ができる3D画像システムです。これらは、このナレッジキャピタルとの連携を通じてNICT(独立行政法人 情報通信研究機構)と共同で研究開発してきたものです。
例えば、口の中の空気の流れをシミュレーションする
私たちが進めている可視化の研究とはどんなものなのか。それを、現在進行中の基礎工学部と歯学部との連携の例で説明しましょう。例えば歯が抜けると、口中の空気の流れがどうなるか、発する音がどう変わるか。こういうことについて、空気の流れをシミュレーションし、可視化する研究を行っています。
空気の動きを予測するには、なかなか難しい計算を要します。口中で生じる乱流によってノイズが生じるためです。その流れを計算するのは基礎工学部の仕事です。一方、歯学部のお医者さんはそれを理解し、絵を使って患者さんに説明したいと思っています。そこで、その間に私たちが入り、計算した結果を可視化するしかけを考えています。
波の表面と、底を流れるもの。その両方を注視したい
ヒューマンウェアイノベーション博士課程プログラム(HWIP)は、自分の専門を深めつつ、異なる分野をバランスよく吸収できるように作られています。技術がどんどん進む時代ですから、学生にはこれまでのような知識の深掘りばかりではなく、さまざまな分野を組み合わせて回遊しながら、必要な知識を吸収していってほしいと思います。
しかしその一方で、普遍的な大学の教育として守るべきところは変わらない、と私は考えています。世の中の流れの速さは、いわば「波頭」で、その底にベーシックな部分がある。それは、ゆったりとした「潮流」です。ゆったりした流れと速い動き。私たち教員は、その両方を見据えていきたいですね。