日本学術会議公開シンポジウム「ICTを生かした社会デザインと人材育成(実践編)」 〜西尾教授と井上教授が講演

 

2013年11月27日
日本学術会議講堂(東京都港区)

新しいイノベーションリーダーを求めて

act_p_yonin今までの手法や技術では解決できない、人類が直面しているさまざまな課題。その解決に不可欠なイノベーションを牽引するリーダーが、今こそ切実に求められています。

「なぜ日本はiPhoneを生み出さなかったのか」という反省を土台にして、情報通信技術(ICT)を基軸とした社会変革を先導する情報分野の博士人材を、5年一貫で育成するプログラムが日本で初めて始動しました。

産学官の連携を強化し真のグローバルリーダーを育成する国家的プロジェクト「博士課程教育リーディングプログラム」。そのICT分野の先陣を切ったのが、大阪大学の「ヒューマンウェアイノベーションプログラム」、京都大学の「デザイン大学院連携プログラム」、東京大学の「ソーシャルICTグローバル・クリエイティブリーダー育成プログラム」です。

プログラムの本格的スタートから半年以上が過ぎた11月27日、その試みの報告を含めた公開シンポジウムが東京・六本木の日本学術会議講堂で開かれました。

act_p_inoue「ICTを生かした社会デザインと人材育成(実践編)」をテーマに、本プログラムの西尾章治郎プログラムコーディネーター、井上克郎プログラム責任者が講演。第2部のパネル討論では、両教授がパネリストとして参加したほか、本プログラムの担当教員である下條真司教授が討論会のコーディネーターを務めました。第一期生の中村達哉さんも加わり、学生の立場からこのプログラムへの期待と課題を語りました。

 西尾章治郎プログラムコーディネーターの講演内容

act_p_nishio現代の複雑大規模な情報ネットワーク社会に、災害によるインフラ崩壊など次々と予測不可能な問題が生じる。これに対応し柔軟に解決できる情報技術がヒューマンウェアだ。それを実現できる人材を養成するため、大阪大学は今年度から「ヒューマンウェアイノベーション博士課程プログラム」を創設し、第一期生28人を受け入れ、約50人の教員、産業界の専門家、海外の研究者らとともに5年一貫教育を進めている。

特徴は「情報科学」「生命科学」「認知・脳科学」の3つの領域を交差させ、融合させるという新たな視点からのアプローチだ。生命システムの持つ柔軟性、頑強性、持続発展性という本質を生かして、人間や環境と調和した、真に快適な情報社会をどのように構築、実現していくか。

そのために、HowよりもWhatを重視する。デザインよりアートだ。それは形として無から有を生む創造活動の根幹であり、イノベーションを創起する鍵ともいえるからだ。

また、人間(ユーザー)を中心としたモノづくり、システムづくりへと変革しなければならない。今までは、イノベーションは革新的なサイエンスとテクノロジーがあれば起きると錯覚していた。日本の情報通信分野の国際競争力が世界20位程度に低迷しているのは、ユーザーの視点に立ったイノベーションが実現できなかったからだ。ユーザーの嗜好把握も、科学的に理解していく。

4年後には第一期生として、日本を元気にする人材がここから巣立っていくものと確信している。

参加した中村達哉さんのコメント

act_p_nakamura僕は高等専門学校から大阪大学3年に編入し、今年からこのプログラム第一期生になりました。28人のうち僕を含めて情報系の学生は3人だけで、残りは生命科学、バイオ系です。僕ら情報系は社会への還元という目標を考えていますが、生命系の人は発明・発見の方に関心があり、なかなか噛み合わない。情報・生命・認知の3分野を融合した人材を、という阪大のヒューマンウェア構想がありますが、違った分野の人との融合研究はジグザグで、こんなに大変なのかと実感しました。でも僕自身は今、自由にやらせてもらっています。修了後は即現場の最前線でエンジニアとして働きたいと考えています。

写真提供:毎日新聞社