酒谷 佳寛

第二期生

酒谷 佳寛

情報科学研究科 バイオ情報工学専攻

インタビュー

「やらんとわからん」

小学生の頃は魚釣りや昆虫採集が好きだったという。「細かな脚やひれが動くのが不思議で、魚や昆虫は機械みたいに見えました。なぜ魚や昆虫が生きていて、ロボットは生きていないとされているのか、それが不思議だったから、興味が尽きなかった」。

「やらんとわからん」。「想像力が鋭い人は、やらなくても考えが及ぶのだと思うんですけど、僕はそうではないので、やってみないと考えられない。だから、いつもやってみてから考える」。例えば、高校生ぐらいから、髪は自分でカットしている。気に入った柄のTシャツのサイズが無かったことをきっかけに、自分でTシャツに絵を描いた。布用絵の具で無地のTシャツに動物や野菜、模様など入れていく。「やってみて、できない場合もある。それも、やってみないとわからない」。

機械と生物の間で

機械で生物っぽいものを作ろうと、高等専門学校の機械工学科に進んだ。ところが機械を作っても、「生き物とは生々しさが全然違う」。自分でやってみて、やっと生きているものと生きていないものの違いが分かった。もっと生々しいものを作れるように、その仕組みを知りたいと大学に3年から編入し、生物の研究を始めた。

現在の研究は、試験管の中で、既知の生物の部品を組み合わせて「限りなく生物に近いもの」を作る研究をしている。人工のDNAと、タンパク質を何種類か混ぜ、試験管の中で、DNAが勝手に複製を繰り返して進化する人工システムを構築しようとしている。

「いつか死ぬということが受け入れられなくて、何で生きているのかを知らないと、死ぬことに対して納得できないという思いがあった。なぜ生きているのか、これはもう実際に作ってみないとわからないと思った」。

新しいかたちの生命や知性との関わり方について考えられる『もの』を作りたい

HWIPの融合研究では、自分の代わりに人工知能が自分のふりをして他人とコミュニケーションしてくれるシステムを作っている。「人間は自分という存在が生きていて、自分の体と別に人格や心を持っているつもりでいると思うんですけど、人間も部品の組み合わせなので、それは思っているだけ。人工知能によって自分の心の延長が作られたときに、どこまでが自分として受け入れられるのかとか、そうやってできてくる新しい知性を自分の中に取り込めるのかとか、自分という存在をどのように認識するのかとか、そういったことを体験できるんじゃないかと考えています」。

あるいは将来、自分が研究しているような人工細胞の研究や、遺伝子操作などの技術がもっと進んで、これまでに人間が見たこともない生物と出会ったり、人間のかたちや心が大きく変わったりする可能性もある。「そんな全く新しいものは、今まで人間が受け継いできた考え方の原理と衝突するかも知れません。その原理だけで、新しい技術の使い方を合理的に判断できるとは思いません。現在でも、人工というだけで敬遠されたり、必要なのに使われなかったりする技術があるし、その逆もある。どんなにいい技術や理論をつくっても、正しく使われないと意味がない。やってみないと、経験してみないとわからない人間からすると、研究者でない人でも、新しいかたちの生命や知性に触れて、体験できるものが社会に欲しいと思った。その拡大された世界を受け入れられるのか、考える材料となるような『もの』を作ることに関わっていけたら」。

2016年12月インタビュー


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