酒井 智史

第一期生

酒井 智史

生命機能研究科 生命機能専攻

インタビュー

細菌を駆動するモーターの形と機能を探る

子どもの頃から理科がすごく好きだったという。小学生の頃は、外で遊ぶよりも図書館で本を読むのが好きな子どもだった。科学をテーマにした学習マンガから、自然科学に関心を持つようになったそうだ。

高校生の頃に読んだ小説「ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界2」(村上龍)がきっかけで、生物の分野に興味を持った。「物語の中に、生物の性質を化学の言葉で表現する生化学者や、生物を細胞の単位で語る細胞生物学の人たちが登場して、そういう分野もあるんだなと関心を持つようになりました」。

研究室にて

学部進学時には、化学・物理学・数学など他の理学分野からの視点で生物を研究する、理学部生物科学科の「生命理学コース」を選んだ。

現在は大学院生命機能研究科で、細菌を動かすモーターの研究をしている。いろいろな種類のタンパク質で構成された1ミリの1万分の1以下のサイズの分子機械が、速い時には1秒間に300回転もするのだという。「複雑な構造と機能の関連を解き明かすのは、すごく魅力的です」。

サイエンスとアートの共通点

真理を追究するサイエンスには、すぐには役に立たない研究もあるが、サイエンスそのものの面白さや重要性がある。「サイエンスとアートは、直接は役には立たないけれども、人を楽しませたり、ちょっと人生を豊かにしてくれたりする点で、どこか似たようなところがあると思います」。大学院で、自分で本格的に研究に取り組み始めた頃から、そんな風に思うようになったそうだ。もともと趣味として、美術を見に行ったりクラシックを聴いたりするのは好きだった。

すごくいい研究に出会った時、「まさしくアートみたいだ」と感じるという。「その手があったか、と悔しいような、でも納得させられる、着眼点にオリジナリティがある論文を読んだ時、芸術的な研究だな、と思いつつ、自分もこういう研究をしたいなって思います」。

良い研究には、「良い問いかけ」が重要だと考えている。「研究ってただやるだけではだめで、何のためにこの研究をするのか、これが分かったら何が面白いか、という部分がすごく大事。頑張れば誰でも解けるような与えられた問題を解くのではなく、問い自体を探し出す目の付けどころのような能力が、博士課程を修了した人にはないといけない、と思っています」。

異なる分野をつなぐ、接合点を探す

HWIPで学ぶ面白さの一つは、異分野の学生たちと日々やり取りする中で感じる、視点の違いだという。「例えば、自分はサイエンスの立場なので分かっていないことが分かればそれで面白い。でもエンジニアの分野の人からそれは何の役に立つのかと問われて、役に立たないと返答するとポカンとされてしまう。自分とは違う視点や考え方は貴重で、その違いをどう乗り越えるかも、大事なポイントだと思います」。

2016年には、パナソニックの研究所でインターンシップを経験した。電気系のメーカーが、なぜ生物系の学生のインターンを募集するのか興味がわいたそうだ。インターンシップを通じて、企業での研究もアカデミアに負けず劣らず面白そうと感じた。扱ったテーマは、生体分子の特異な性質を工業デバイスとして活かすために、生体分子の変化を工学的に扱いやすい光や電気信号に変換するというものだった。異なる分野同士をつなげる、接合点となる分野がカギになると実感した。

将来は民間企業で、サイエンスとは少し違った角度からの研究にも挑戦してみたいと考えている。「自分が取り組んできた生体分子の性質などの研究を他の分野とつなげて、今までにない新しいものを作る。そんな可能性を模索していきたい」。

2017年1月インタビュー