主観の世界への客観からのアプローチ

課題解決に本気で立ち向かうほど、
融合研究は不可欠になってきます。

八木 健 教授

Yagi, Takeshi

生命機能研究科 心生物学研究室

八木 健 教授

「こころ」という主観の世界に客観的にアプローチしていきたいという八木教授。人間の脳はどういう風にできてくるのか、また、どういう風に意識が生まれるのか。このことを生物学的に理解していきたいと考えている。

神経細胞の接続には、複雑性がある

千億から数千億のニューロンからできている脳は、無限大ともいえる情報処理を行っています。神経細胞はグループを作り、時によって、集団の活動が記憶や情報を作っていることが分かっています。また同じ神経細胞が異なるグループで使われる場合が多いことも知られています。このように多数の組み合わせが可能となるため、無限大に近いような情報処理ができるのだといえます。
神経細胞がひとつひとつ独立した個性をもち、かつ、さまざまなグループを作って活動できるのはなぜでしょうか。隣り合う神経細胞は、5個に1個ほどの確率で回路を作っており、ごく近いところにあっても、つながっていない場合もあります。最近の解析によれば、神経細胞は、規則によってつながる性質と、偶然につながるという性質の両方をもつということが分かってきました。そういう複雑性をもって回路ができているのです。
この規則性と偶然性がどう両立し、ネットワークとして成り立っているのかは、まだ分かっていませんが、私たちが進めている遺伝子研究が、回路の形成を理解するのに役に立つのではないかと考えています。

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神経細胞の親和性を決める50種の遺伝子

私たちは、タンパク質になった時に細胞同士の親和性を決める遺伝子が、50種ほどあることを発見しました。この50種はいろいろな組み合わせでランダムに発現しています。しかしそうした状況下で、同じ親和性をもつもの同士は規則性をもってつながり合います。規則性とランダム性の両方を使って神経回路を作っているのです。私たちは、このような複雑性のあるネットワークが「こころ」を作り出すベースではないかと考え、証明しようとしています。

融合研究は目的ではなく、本質に近づくための取り組み

意識やこころを遺伝子や発生プログラムから理解しようとしているのは、私たちだけではありません。同じテーマに、工学的観点、生理学の観点から挑んでいる研究者の方がいます。本質的に同じ目標をもつ研究者が、それぞれ本気で考えていけば、融合的なことはおのずと生まれてくるように思います。先に融合ありきではなく、何かを生み出すための融合でなくてはいけないと思うのです。
私自身は、遺伝情報からこころの問題を解明してみたいのですが、実際に研究を進めていくと、生理学、数学、工学的な応用ともつながってくる。そのときには、自分たちの考えを理解してもらい、他の分野の専門家と協力することになります。本質を掘り下げていけばいくほど、融合的な活動が必要不可欠になってくると思います。

融合研究をめざす学生たちへのメッセージ

yagi3自分がおもしろいともったこと、本質だと思っていることに対して一生懸命取り組んでほしい。そんな気持ちでチャレンジしたことに、決して無駄はないと思います。無駄どころか、関係ないと思っていることもどこかでつながってくる。新しいものを生み出す契機になることもあるのです。

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