インターネットは生物から何を学ぶか

情報ネットワーク研究は
もはや、融合研究なしでは行き詰まる。

若宮 直紀 教授

Wakamiya, Naoki

情報科学研究科 バイオシステム解析学講座

若宮 直紀 教授

拡張性、適応性、頑健性などの生物の優れた特性をもたらす原理を情報ネットワークの仕組みに応用する研究を続けてきた若宮教授。
ビッグデータ問題の解決にもつながる新たなシステムの構築に取り組んでいる。

始まりは蛍の発光同期

私は生物の挙動を再現する数理モデルを使って、現在の、また将来のネットワークが抱えるさまざまな問題の解決に取り組んでいます。
最初に注目したのは「蛍」。
蛍は個体としては独立して発光していますが、群れになると、決して集中制御されているわけではないのに、うまく同期して発光するようになることが知られています。
この蛍の発光同期を説明する数理モデルを情報ネットワーク上で動作させることにより、自律分散的な同期制御を実現しようというのが、生物に学ぶ情報ネットワークに関する私の最初の研究テーマでした。

 現行のネットワークは危機的状況

半世紀前に生まれた世界初のコンピュータネットワークは、4台のコンピュータで構成されていました。ところが今や、ゲーム機も含めると世界中で数十億台の機器が、有線や無線によって情報ネットワークにつながっています。
また、今もインターネットで使われているTCP/IPが約30年前に誕生した時には、世界には数千台のコンピュータしか存在しませんでした。
誰も想像できなかったほどの規模で、ネットワークの爆発的な増大が起きているにもかかわらず、昔ながらの仕組みが使われ続け、また、場当たり的にいろいろな仕組みが追加されているわけです。
ネットワークは常に不安定な状態です。急激な規模や多様性、複雑性の増大に対して、耐えられるようにはできていません。

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 生物は環境変化に適応する

生物は、分子、細胞、組織、器官、個体、集団、生態系のように、小さな構成要素がつながり合って複雑な構造、組織を作り上げています。
工学的なシステムもさまざまな部品から構成されていますが、使われる環境を想定し、その環境において最もうまく、最適に動くように設計されています。
砂漠や極寒の地で活動する生命体がいることからも分かるように、生物は、さまざまな環境に合わせる高い適応力があります。また、個体・個人としては、それぞれが独立に判断して行動しているのに、社会や組織として破綻していません。
私は、このような生物の仕組みをネットワークに取り入れることによって、大規模で複雑な情報ネットワークがこの先も破綻なく動作し続けられるようになると考えています。新世代の情報ネットワークを構築するには、生物学など、ほかの分野との融合研究が不可欠だと思えるのです。

 融合研究で相乗効果を

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私の所属する研究科では、以前から生物学と情報科学の融合を進めてきました。また、脳情報通信融合研究センター(CiNet)などほかの研究機関との共同研究も数多く実施しています。
情報科学者が生物科学者に学ぶと同時に、生物科学者が情報科学者に学ぶという相乗効果により、双方の研究分野が発展し、また、さまざまな工学的な応用の可能性が開けると思っています。

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