「ボーダーフリーで互いにリスペクト」が融合研究の基本姿勢

生体システムを構築する「タイトジャンクション」の機能解明に挑む。

月田 早智子 教授

Tsukita, Sachiko

生命機能研究科 個体機能学 医学系研究科 分子生体情報学

月田 早智子 教授

月田教授の研究対象は、上皮細胞シートの細胞間のバリアを構築して、生体システムのオーガナイザーとして機能するタイトジャンクションの役割。上皮細胞は、隣同士の細胞がしっかりとタイトジャンクションで接着し合って、「水ももらさぬシート」を形成している。この上皮細胞シートシステムの構造と機能について医学系や理学系研究室と協力し、接着分子クローディンやそれに付随する細胞骨格分子・シグナル分子に特に注目して、分子レベルでのメカニズム解明に取り組んでいる。

上皮細胞シートの細胞間のバリアを構築するタイトジャンクションには大切な機能がある

上皮細胞は、組織学的な細胞分類でいうと体表面、腸管の内腔などを覆っている細胞です。毛細血管の内皮細胞なども含みます。上皮細胞は互いに接着し、シートを作るという性質があります。シートによって皮膚を外側から、また腸管、血管を内側からカバーしているのです。
ではシートを作る上皮細胞は、どういうふうに機能を発揮するのでしょうか。細胞同士が接着していても、隙間からものが漏れたり染み込んだりしては困ります。体内の水分が全部出ていってしまったり、毒性のあるものが体内に入ってきたりしてしまうわけですから。上皮細胞のシートは体内微小環境を保つ働きをしています。また、基本的に細胞と細胞の間はシールされていますが、腸管の上皮細胞シートの細胞間のバリアなどには、細胞同士の間を必要なイオンなどを選択的に通すという機能があります。そのメカニズム解明に取り組んでいます。
また、細胞間の接着部位に集積する接着分子クローディンはタイトジャンクションを構成しますが、一方で細胞内の骨格構造やシグナル伝達を制御する拠点として機能します。その機能を統合的に解析しています。特に最近では、タイトジャンクションから連続した骨格構造として、上皮細胞シートの最表層でシートに平行して広がるアピカル骨格構造に注目しています。

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医学、理学の境界は意識しない

上皮細胞の研究そのものは、がん研究とも関連が深いものです。がんの90%以上が上皮細胞にできるし、上皮細胞シートは外界との境界線にあり、生体防御の最前線となるからです。また一方で、上皮細胞の極性形成の分子機構は神経系など広くいろいろな細胞種にも通じるもので、そのため、医学系、理学系との融合研究も盛んに行っています。
上皮細胞シートが極性をもって分化する過程も重要な研究対象です。繊毛上皮や小腸栄養吸収上皮の役割についての研究も進めています。気管・卵管などでは、多くの繊毛が生じた多繊毛上皮細胞が分化しています。気管の繊毛の動きを観察すると、多くの繊毛が規則的に一定方向に傾くという性質がありますが、この傾きをもつ性質を決めるのは、上皮細胞の細胞接着や表面のアピカル骨格構造です。そこで接着と細胞骨格の組織化のメカニズムについて探究しています。多繊毛上皮細胞とは別途に、一次繊毛が上皮細胞シートの極性に関わるメカニズムの解明にも取り組んでいます。繊毛基底部の基底小体には、付属構造が付着しますが、それらは、アピカル骨格構造構築のかなめとしても機能します。このような一次繊毛の役割は、その機能不全が繊毛病として広く捉えられることともあいまって、近年注目を集めています。
私は、医学系、理学系などとの境界は意識せず研究を進めています。さらに、工学・情報科学との融合という点では、コンピュータ解析を用いた細胞の動態、骨格の自己組織化などについての研究を志向しています。

融合によって研究が広がる

融合研究は人と人とのふれあいと話し合いの中から生まれてくるものだと思います。私たちが生物学的な観点から考えていることを、相手の方が物理や数学系の方なら、それぞれ専門の視点から語ってもらえます。私たちの方も新しい側面を発見することができます。融合研究のおかげで研究が広がっていくという面があります。
また、私たちのバイオロジーを起点にした融合研究は、その延長線上に病気の研究につながっていく可能性があります。病気の問題は、解析が進めば創薬にも結びつくかもしれません。

学生と同じ目線に立って進めたい

tsukita3融合研究は、進めようという意識がないとなかなか進みません。常に意識することも大事だなと実感しています。また、複数の人が協力して行うわけですから、誤解が生じないように正確に伝えるよう注意することが大切です。情報や熱意を共有することはとても重要なことです。同様のことを学生のみなさんにも伝えています。私は相手と同じ目線に立つよう注意しています。年齢や経験の差から自由でなければならないと思うからです。学生の方からも、どんどん意見を出してほしいですね。
また最近、元気で柔軟な視点をもった学生さんが、確かに増えているように感じています。個性もきわだっているかもしれません。そして彼らは発信することに積極的で、その方法はいろいろですが、自分を表現することができているように思えます。それは、とても喜ばしいことです。いろいろな意味でボーダーフリーの境地で、互いにリスペクトして協力することができたなら、これまでにない新しいサイエンスが生まれることが大いに期待できます。それはたいへん楽しみなことで、そうした中から、考えの及ばない「何か」を得たとき、人々が、その生活や考え方が、変わる、かもしれません。

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