トライ&エラーで成長する生物の柔軟さに学ぶ

共同研究は、想定外の事態に対応する時の
脳の活動に似ている。

小倉 明彦 教授

Ogura, Akihiko

生命機能研究科 神経可塑性生理学研究室

小倉 明彦 教授

記憶が固定される仕組みを細胞レベルで研究している小倉教授。
異分野との交流に関しては「難しさもあるが、研究者同士が繰り返し刺激を与え/受けることで、互いの理解が深まり、共通の基盤ができてくるだろう」と語る。

3回の刺激で持続的な記憶の固定が

記憶の固定はタンパク質合成によると考えられます。私たちは生きた脳組織を培養して、電気刺激や化学刺激を与え、記憶を固定する細胞の仕組みを調べています。
実験を繰り返すうちに、「1回目の刺激で、未知のタンパク質が合成される。24時間以内に2回目の刺激をすると、それを使って第二のタンパク質が合成される。3回目の刺激で合成されるタンパク質が新しい回路を作りだす」ということが分かってきました。つまり、3回の繰り返しによって記憶が固定されるということです。

photo_sample01ogura

融合研究が新しい局面を切り拓く

私たちの研究は、世界初だと思っています。しかしまだ黎明期なので、より多くの研究者に参加してもらい、いろいろな角度から取り組んでいく必要があります。異なる領域との共同研究によって、新しい局面が見えてくるのではないかと期待しています。

情報理論を生かして

今後は、細胞レベルで記憶が獲得・固定されていく様子を、情報科学や熱力学の知識を元に、シミュレートしてみたいですね。記憶は、シナプスが新たに作られたり消されたりして固定されます。シナプスは、刺激が与えられてから新たに伸びてくるのではなく、いつも出たり、引っ込んだりしています。刺激を受けると、まず出入りが激しくなり、出るのも引っ込むのも増える。その次に引っ込む方が減り、差し引き結果として増える。情報の流れを限定するのは、熱力学的に難しいことですが、それを脳は最小のエネルギーで行う。それにはこのようにゆらぎを利用するやり方が有利なのでしょう。

共同研究で想定外に対応する力が育つ

異分野間の交流は、脳の働きからいうと、「想定外の新規刺激の入力」、神経回路の新構築を促す活動だと思います。私は、どんどん共同研究をするように院生に呼びかけています。
異なる領域との交流を難しくしているのは、言葉、用語の使い方の違いでしょう。異分野はどうせ分からないという「思い込み」もあって、「実は同じことを言っているのだ」と分かるまでに時間がかかります。
そこは諦めず、食い下がっていくしかありません。何度も繰り返して刺激を与え合ううちに、接点ができてきます。
今回のプログラムを通じて、理解の共通基盤を作っていきたいですね。

研究室のホームページはこちらから