改良ではなく創造をめざす

生物の適応能力や進化能力に学んで、
将来ネットワークの構築を。

村田 正幸 教授

Murata, Masayuki

情報科学研究科 先進ネットワークアーキテクチャー講座

村田 正幸 教授

生物の環境適応性や進化に学び、環境に適応して進化する情報ネットワークの設計・制御に取り組んでいる村田教授。研究を深めるため、異分野との積極的なコミュニケーションに努めている。

生物に学ぶ情報ネットワーク

情報ネットワークは、さまざまな環境変動にさらされる中、それに柔軟に適応する能力が必要とされます。もちろんお金をかければ、今までの情報ネットワークでも環境変化に強いものは実現します。しかし、それには限界があり、私たちは制約の多い中でよりよいものを作る必要に迫られています。
一方、生物は必ずしも高機能をもつものばかりではないのに、素晴らしい環境適応能力を備えています。そこそこの機能しかない生命体も、何とかうまくやっているのです。そこで私たちは、情報ネットワークも生物に学んだ考え方で設計・構築していこうと考えました。この研究の一環として、通信キャリアやベンダーなどと共同で、生物のゆらぎ原理に基づいたネットワーク制御技術の開発に取り組んでいます。
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「進化」「行動多様性」を取り入れたアプローチ

生物の適応能力を高める仕組みの一つとして、自己成長、すなわち進化する能力があります。私たちはこの点に着目した研究にも取り組んでいます。これは同じヒューマンウエアイノベーションプログラムのメンバーである四方研究室との融合研究としても取り組んでいます。研究成果が出つつあるほかの例として、「潜在的にさまざまな機能をもたせ、環境に応じてその一部のみで、必要な機能を発現するWebサービスの設計」が挙げられます。この仕組みをソフトウエアで実現すれば、さまざまなサービスの要求に対して、それが未知であっても、適応できる能力を非常にロバストな形で実現できるようになります。 さらに、最近は、CiNet(脳情報通信融合研究センター)の研究者とともに、脳機能に学んで、ネットワーク科学と呼ばれる学術分野を発展させるとともに、それに基づいてさらに高度な情報システムを作る研究開発にも取り組んでいます。

既存の思考法を打ち破るきっかけ

融合研究のメリットとしては、知見が広がるだけでなく、細分化された知識を打ち破って、広く物事を捉える視点が身につくという点が大きいと思います。というのも、20世紀は各学術分野はそれぞれが深く発展してきましたが、ある分野の専門家には他の領域の成果が深化された故になかなか理解できなくなりつつあるのが現実だからです。既存の技術をさらに深く掘り下げるアプローチでは、改良はできても新しいものは作れません。融合研究をやっていると、新しいものを生み出すきっかけがあらゆるところに潜んでいることに気づきます。

新しいイノベーションを見つけよう

dr3_murata融合研究では、「異分野の知見に触れて驚き、その知見を使ってみたい」という考えが大事だと思います。異分野の研究者との議論のなかで、知っていることを教え合うという互恵的関係を構築することで、互いに触発されて研究が進みます。 自分の得意とする分野の論文を読んでいるときには、ただ漫然と読んでいるわけではなく、すでにもっている知見や知識をフルに活用していと思います。逆に、異分野の勉強をする時には、その分野の論文をただ読むだけでは、その論文の中で重要なことはどこなのか、なんなのか、わからないことはよくあります。それを知るためには、その分野の人と直接議論することがだいじです。その際には、暗黙知を聞き出す能力、すなわち真の意味でのコミュニケーション能力が必要になります。そこには学問に対する情熱も含まれるし、自らの研究成果を理解してもらえるまで議論する気力も重要です。
このプログラムで学ぶ皆さんとともに、米国型のプラグマティズムに沿ったイノベーション、いわゆる破壊型イノベーションを真似するのではなく、新しい形の日本型イノベーションを実現したいと考えています。その種は融合型研究にあります。詳しいことは、今後、みなさんとじっくり議論したいと思います。

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