多方向にアンテナを張ろう

研究は、好奇心や楽しみの延長にあるもの。
不思議を追い求める心が自分を磨いてくれる。

倉橋 隆 教授

Kurahashi,Takashi

生命機能研究科 生理学研究室

倉橋 隆 教授

倉橋教授は、さまざまな感覚を物理的、化学的な視点からアプローチしている。最近進めているのは「におい」の研究。従来の計測機器では捉えられなかった、食品のにおいの劣化について画期的な発見を行った。

ファジーな感覚「におい」に取り組むおもしろさ

最近はもっぱら嗅覚の研究をしています。防臭、香水、両方からのアプローチです。においは「何となく」「気がする」と表現することが多いですね。いろいろな感覚の中で、最もとらえどころのないのが嗅覚。この嗅覚を物理学、化学で説明していくところに、おもしろさと醍醐味がある研究といえます。
実験は動物を使って行います。というのは、嗅覚のメカニズムは分子レベルとなると、動物でも人でも同じだからです。もちろん、非侵襲に人のにおいの感覚も調査します。その両者を比較して新しいメカニズムを追究しています。

kurahashi2

ワインの匂いが劣化する仕組みを突き止める

私の研究には、学際的、国際的、両方の広がりがあります。例えば、実験では細胞や分子を扱いますが、化学分析も必要なので、その部分は専門家に協力してもらいます。人のにおいの検査も、においの評価のプロに協力してもらいますが、こちらは国際的な広がりです。例えば、ワインの異臭の研究を研究室で行ったときは、フランス、アメリカの専門家と一緒に取り組みました。
ワインは、20本に1本くらい「香りがよくない」ものがあるといわれます。製造時にコルクがある種の化学反応を起こし、ワインの成分を少し変えてしまうために、ダメになってしまう。それを見極めるために、ソムリエがテイスティングを行うのです。
私の研究室では、動物がにおいを感じるセンサー細胞の記録をとりながら、ワインをまずくするといわれるTCA(トリクロロアニソール)という物質を加え、どうなるかを調べました。するとその物質は、極低濃度では変なにおいを作り出しているのではなく、においを感じる細胞の興奮を止めている、つまりにおいの感覚をなくしていることがわかったのです。
その物質は、実はありとあらゆる食品において、においの劣化を起こしているということがわかりました。今後は、TCAがどういう食品に含まれているのかを突きとめる研究がスタートします。私たちの実験を通じて初めてTCAの存在がクロースアップされました。今後、食品のにおいの劣化を検証する動きや阻止する動き、防臭に関する研究は活発化するでしょう。

レベルの高い融合研究チームに入っても、そこに安住してはいけない

kurahashi3融合研究を成功させるためには、自分を高めようとがんばることが重要です。できるだけ努力して研究チームに入るという姿勢が大切です。そのチームに入れば、自動的に自分が持ち上がるだろうという考えはいけないと思います。
新しいことにチャレンジしたいという意欲にあふれた若い世代の皆さんは、世の中にあふれる情報の中で、「何をピックアップして取り組むべきか」また「どうやって社会に貢献できるか」という感覚を持ち続けながら、自分を高め続けてほしいと思います。

研究室のホームページはこちらから