生き物の形や模様のできる原理の探求

主に魚を使って、シマ模様やヒョウ柄など、皮膚の模様ができる原理を解明。今後は三次元パターンの形成、特に骨の形ができる仕組みへと研究を進めたい。

近藤 滋 教授

Kondo, Shigeru

生命機能研究科 パターン形成研究室

近藤 滋 教授

謎がある。答えを知りたい。それがサイエンス。
失敗するかもしれない?
いやいや
危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし。
研究を始めれば、
そのアイデアが道となり、
その実験が道となる
迷わず行けよ、行けば解るさ
(参考資料:『猪木詩集「馬鹿になれ」』)

模様は波、だから動く!

皆さん、動物の模様は動くって知っていました? 例えばタテジマキンチャクダイという魚。幼魚の時は渦巻き模様で、成魚になると縞模様になります。これは多くの人が知っています。でも、本当におもしろいのはここから。成魚は最初10cmくらいだが、どんどん大きくなり40cmにもなる。で、そうなると縞は太くなると思うでしょう? いやいや、そうではありません。縞は太さを変えずに本数が増えていきます。しかも、その増え方がすごい。それぞれの縞に枝分かれができて、その部分が、ジッパーが開いていくように動いていき、太さを変えずに本数を変えるのです。なぜ、どうやってそんなことが起きるのか? 答えは模様が「波」だから。縞模様というのは、実は波(ウェーブ)なのです。この事実は、魚の専門家もごく最近まで誰も知りませんでした。しかし、60年も前に、模様が波であることを予言した天才数学者がいました。コンピュータ科学者としても知られるアラン・チューリングです。彼の、「化学反応で波が生物のパターンを作る」という仮説は、今生物学の分野でホットに扱われ始めています。
元気ですかっ!!

kondo2

必要があるから融合する

私の研究は「生物学と数学の融合」である、とよくいわれます。しかし、特にそれをめざしているわけではありません。生物の形や模様を考えたり表現したりする時に、どうしても数学が必要なので使っているにすぎません。分子生物学だろうと、数学だろうと、所詮は手段に過ぎない。手段はモチベーションにはならない。「謎」が全ての研究の出発点です。無理に「融合研究」をめざす必要なんか全くありません。今まで誰もやっていないような謎にぶつかれば、必ず従来の方法では足りない、と感じるはず。そうなれば、いろんな手段を使わざるをえません。答えをめざして進んでいけば、勝手に融合研究になるはずなのです。
だから、大切なのは、魅力的な「謎」にロックオンしていること。それがあれば、道はおのずと決まります。
元気があれば何でもできるっ!

クエスチョンをもつ人には、答が見えてくる。

kondo3生物の世界は「謎」だらけです。だから、単に自分の「謎」を見つけるのは難しくない。しかし、謎を見つけても、どこに行けば答えが見つかるのか解りません。でも、ここが科学者の個性の発揮しどころです。ユニークな「謎」には、ユニークな「解法」があった方がすてきです。
じゃあ、そのすてきな解法を見つけるコツはいったい何でしょう。人によって違うと思いますが、私はぼんやりした「謎」の正体を裸にしていき、その根本は何かを突き詰めることだと思っています。
チューリングは、「どうやって複雑な動物の形ができるのか?」という、非常に漠然とした問題の根本を考えました。そもそも、なんで形ができるのが不思議なのでしょう?
そうです。普通、生き物以外の世界では、人間が意図的に作り上げない限り、正確な形の物(難しく言うと、空間的な秩序)はできません。エントロピーの法則です。しかし、生物の場合、非常に秩序立ったものが、ひとりでにできる。ここが、謎の中核です。
だとすると、「自律的に空間的な秩序を作る原理」があれば、それが答えになるはずです。チューリングは、仮想的な化学反応を組み合わせて、波(等間隔構造)を作る反応系が存在しうることを証明しました。「謎」を見極めれば、それはほとんど答えなのです。
残念ながら、チューリングのモデルは、誰も証明する人がいなかったため、ほとんどの生物学者には信じられていませんでした。だから私にとっての「謎」は、「なぜ、こんな素晴らしい仮説を誰も信じないのか?」でした。答えは、……そうです。「常識的に波が体で動いているなんて、信じがたい!」です。これが解れば話は簡単。動いているのを見せてやればよい。で、一番動きそうな模様をしている魚を飼って、その成長過程を観察したら、大当たり。冒頭にあるような動きを観察して、一発で「波が体にある」ことを示すことができました。
研究のやり方、手段など、皆さん勉強することはたくさんありますが、覚えておいてください。目的を見つけることが一番大事。できるだけ魅力的で「答えが知りたい!」と思える「謎」が見つかれば、迷わずそれに突き進みましょう。
行くぞ~。1、2、3、ダ~~~~~。

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