脳の空間、時間認識に挑む

脳は手を抜いて、要領のいいやり方で
外界に対応しているんです。

北澤 茂 教授

Kitazawa, Shigeru

生命機能研究科 ダイナミックブレインネットワーク研究室

北澤 茂 教授

ヒトの行動をニューロンレベルで解明し、さらに、成果を数理モデル化したいと考える北澤教授。
モデル化には複雑な統計解析の知識や手法なども必要となることから、融合研究によるアプローチに期待をかけている。

人間の「目」の不思議を探究する

私はヒトの空間認識、時間認識について研究しています。「目を動かしても外界は動いているように見えないのはなぜか」の研究もその一例です。
人間は、恐るべき高速で目を動かしています。もしビデオカメラで同じことをすると、手ぶれ画像になってしまう。それなのに、肉眼ではなぜ外界はぶれて見えないのでしょうか。なにか非常に巧妙な処理を行っているはずです。この謎は、1000年前のアラビアの書物にも、デカルトの著述にも触れられています。この謎を解明するために、心理学的な実験や、映像を見る時の脳活動の計測などを組み合わせて研究を進めています。
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「現在」は何秒か?

一方、時間認識をめぐっては、人間にとっての「現在」とは何かについて研究を進めています。物理学的な「現在」には幅がないですが、私たちが心で感じる「現在」は、どうも0.1秒とか0.2秒程度の間の情報を脳が「総合」して作り出しているようです。0.1秒だとすれば、脳波のアルファ波の周期とほぼ同じです。このアルファ波が脳の時計のような役目をしていて、0.1秒ごとに最大で20 cmも離れた領域の間の情報を「総合」しているのではないか。大脳皮質には150億もの細胞がありますが、1つの脳細胞は1000ほどの細胞としかつながっていません。これほどまばらな結合で、0.1秒ごとに、20cmの距離を克服して情報を「総合」するにはかなりの「手抜き」が必要です。時間の順序判断が逆転するような錯覚の事例を調べると「手抜き」の仕方がわかると考えて研究を進めています。目を動かしても世界が動かないという空間認知にも、同じような「手抜き」の原理が使われていると思っています。

融合研究主体のプログラムにも、抵抗感はない。

photo_kitazawa02私の場合、以前から言語学をご専門とする先生などと一緒に研究してきましたから、融合研究主体のプログラムにも、特に抵抗はありません。脳の時間認識の研究でも、言語学や臨床神経心理学の先生方と共同で融合研究を進めています。例えば、人は時制を自在に操っていますから、時間認識と言語は不可分の関係にあります。また、認知症では「今日の日付」がわからなくなりますから、時間認識は臨床的にも重要な脳の機能といえます。
このプログラムが、新たな発見や解明につながる出会いの場になればいいですね。今までにないことを創造する若い才能がどんどん出てくることを期待しています。

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