異分野連携で「その先」をめざす

ものを見ているとき、
脳はどうやって世界を見ているのか。

藤田 一郎 教授

Fujita, Ichiro

生命機能研究科 認知脳科学研究室

藤田 一郎 教授

脳のさまざまな認知機能の中でも、藤田教授は視覚に注目している。脳はどのような情報処理を行うことで「頭の中の世界」を構築しているのか。それを知るために、最新鋭の設備を使ってリアルな脳の情報処理を研究している。

「見る」を実現する、複雑精妙なメカニズムに挑む

今、興味をもっているテーマの一つは「世界はなぜ立体に見えるか」です。右眼だけで見る世界と左眼だけで見る世界は、横に少しズレています。近くの景色は大きくズレますが、遠くの景色はあまりズレない。このようなズレの違いを脳が検出して、奥行きに変換する機能を両眼立体視といい、この両眼立体視の機能を調べることが研究の大きな柱です。
長い間、両眼立体視に関係する情報は、大脳の一次視覚野から頭頂葉に伝えられるといわれてきましたが、我々の研究から、側頭葉も関与することが分かってきています。そこで現在、側頭葉と頭頂葉がどのような役割分担をして世界を「立体的に見る」ことを実現しているのかを調べています。これまでの研究の結果、景色が速く動く時、細かく景色を見なくてはいけない時など、場合に応じて両者が分担作業を行っていることが分かってきました。
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世界でも類を見ない視覚の研究方法を用いて

もう一つの研究の柱は、視覚に関係する大脳皮質の細胞がその性質や機能に基づき、どのように配列されているのかを知る、つまり機能構築を明らかにしようという試みです。機能構築が分かれば、そこで行われている情報処理の仕組みが推定できます。
この研究は、従来、一つずつ神経細胞の性質を調べるという方法を行われていました。今や、二光子レーザー顕微鏡法というやり方を用いれば、生きている動物の頭の中で、いくつもの細胞に対して、「どんな刺激に対してどう反応するか」を調べることができるようになりました。この方法が動物実験に適用できるようになったのは、ほんの7、8年前。サルに適用できるようになったのは2、3年前。そして、二光子レーザー顕微鏡を使ったサルの視覚連合野の研究ができるのは、私が知る限りでは、この研究室が世界で唯一ではないかと思います。

融合研究が当たり前となる日

dr3_fujita私たちの分野では、生物学の知識が必要なだけでなく、さまざまな光学機器を扱えなければなりません。また、得られたデータは数学、統計学、あるいは情報科学的方法から解析しています。ヒューマンウエアイノベーションプログラムは、情報、生命、基礎工学の三研究科が連携して進める取り組みなので、各研究室での先進的な活動を先へと進められる若い世代を育てるには絶好の機会だと思っています。
私の先輩たちは、生理学と解剖学は遠い分野だと思っていました。しかし私が大学生の頃、両方を当たり前のように学べる時代が来ました。そのため、私は機能と構造を合わせて研究することに違和感を感じません。同じようなことが、このプログラムの中で起きるのではないでしょうか。将来、三つの分野が融合してはじめてできるような研究が自然に出てくるだろうと考えると、とても楽しみです。

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