生命がもつ低エネルギー、 高効率のしくみを応用する

DNAを研究する立場から
情報科学と生物学の融合を考える。

平岡 泰 教授

Hiraoka, Yasushi

生命機能研究科 細胞核ダイナミクス研究室

平岡 泰 教授

遺伝子の機能解明に取り組む平岡教授は、情報科学、ロボット学との融合研究が自身の研究に新しい見方を提供することを楽しみにしている。
さらに「遺伝による情報伝達の仕組みをヒントにすることで、新しいコンピュータの仕組みが生まれるかもしれない」と期待を寄せる。

遺伝子の未知の機能を探る

生物は、DNAに載っている遺伝情報を必要に応じて読み出して利用しています。遺伝子の中には、「なくてもよいのではないか?」と思えるような、何をしているのか分からないものがたくさんあります。さらに、普段はなくても問題が起こらないのに、ある環境になると必要になる遺伝子もある。それらはいわば「いざという時」のための遺伝子です。
私の研究は、こうした遺伝子にさまざまなストレスを与えて、まだ発見されていない役割をひとつひとつ調べることです。
情報科学との融合研究によって、これまでの生物研究にはなかったアプローチが見つかるかもしれないと期待しています。また、ロボット学との交流にも非常に興味があります。生物の反応や記憶に関する分野は、認知科学という領域を介してロボット学と近いかなと思っています。

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生物とコンピュータの共通点

生物の遺伝情報伝達とコンピュータ制御には、似たところがあります。それは、生物もコンピュータの世界も、どちらも情報が一列の配列で記録されていること。生物はAGCTの4つ、コンピュータは0と1の2つのシグナルで、一列に配列したコードを利用しながら、言葉を紡いでいきます。
この共通点から「細胞の情報伝達の仕組みを情報科学に活用できるのでは」と考えられるようになり、DNAコンピュータというアイディアが生まれています。

生物はノイズをものともしない

摂氏37度に室温を保ち、生きたまま細胞を観察できるコンピュータ制御顕微鏡室の中で。 平岡教授がこのシステムを日本に導入した。

摂氏37度に室温を保ち、生きたまま細胞を観察できるコンピュータ制御顕微鏡室の中で。
平岡教授がこのシステムを日本に導入した。

今のコンピュータは、現実世界に存在する曖昧な部分を例外的状況と見なし、0か1かに決めこんで判断します。一方、細胞は配列情報を越えて働きます。生物にとって、生きる世界に曖昧さがあるのは当たり前。細胞はその曖昧な状況の、ノイズともいえるほどの低エネルギーを利用して動けるようにつくられています。
生物はいろいろな階層で、この低エネルギーで動く、高効率な仕組みをもっています。
私は「よく分からない情報」、つまりコンピュータが苦手とするタイプの情報にもうまく対応する細胞の情報伝達を「すごい」と思います。それについて深く学ぶことは、次世代コンピュータの情報処理のヒントにもなると思うのです。

 

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