阪大リーディング合同研究会
「第二回 阪大院生五者知の横断」

2017.4.30 豊中キャンパス 基礎工学国際棟

本プログラム履修生を含む大阪大学の5つのリーディングプログラムの学生が共同で主催した「阪大院生 知の横断(第2回)」が、2017年4月30日に大阪大学豊中キャンパス基礎工学国際棟ホワイエにて開催されました。本プログラムからは島谷、内田が企画者として、芝井が講演者として、他8名の履修生が聴衆として参加しました。本イベントは、リーディングプログラム生による講演を通じて院生同士が異分野交流をしつつ、アウトリーチ活動の一環として中高生ら若い世代に将来の指針を考えるきっかけとなる場を提供することを目的としています。昨年度に続き2回目の開催となった今回は、第1回を大きく上回る116名(うち中高生72名)もの方に参加していただき、参加者からは「今まで知らなかったことに興味をもつことができた」や「講演者との距離が近くて面白かった」といったたくさんの好意的な評価をいただくことができました。「知の横断」という名前の通り、本イベントが異分野間の繋がりを築き、さらには本プログラム履修生を含む阪大生が自身の研究を社会に発信するためのプラットフォームとなることを目指して、これからも活動に取り組んでいきたいと考えています。

 

講演の様子

昨年度に続き2回目の開催となった今回は、3名のリーディングプログラム生が講演者となって、それぞれの専門である計算科学、心理学、進化工学というテーマについて、高校生にもわかりやすいように話をしました。

1人目の講演は基礎工学研究科D2・カデットプログラム生の高椋章太氏による題目「理論科学者は新しいものを作り出せるか」でした。自身の専門である化学を例に理論科学のモチベーションや行われていることを概説する内容で、理論科学者といっても天才の専売特許ではなく、普通の話し好きの人がやっているという主張が印象的でした。

 

2人目の講演は人間科学研究科D1・超域プログラム生の小林勇輝氏による題目「自分の内側を知る –実験心理学の考え方-」でした。人の心を解き明かすロマンがひしひしと伝わってくる内容で、講演者の熱い思いも感じ取ることが出来ました。

 

 

3人目の講演は本プログラム履修生の芝井厚氏(情報科学研究科D3)による題目「“生きているとはどういうことか”とはどういうことか?」 でした。生物とは何か、という疑問が歴史上さまざまな学問・研究者の間で答えられることなくたらい回しにされてきたこと、そして技術が進展し、この疑問にいよいよ答えなければ社会そのものが崩壊してしまう(=戦争)時代になりつつあるという指摘は、高校生にも大きなインパクトを与えました。

 

成果と課題

当日は、第1回を上回る116名(うち中高生72名)もの方に参加していただくことができました。聴衆と講演者の間で活発な議論が行われ、大学生だけでなく、中高生も積極的に質問する様子が見られました。参加者からは「今まで知らなかったことに興味をもつことができた」や「講演者との距離が近くて面白かった」という評価をいただき、異分野交流やアウトリーチといった目的は十分達成できたと考えています。
一方で、中高生と大学生の両方が満足できる講演をどのように行っていくべきかという課題が得られました。中高生にとって分かりやすい発表に注力しすぎると、議論の主題を深める時間がとれず大学生にとっては面白みにかける講演になってしまいます。改善点として、例えば、異分野について理解する時間と講演の主題に関する時間を1つの講演の中で明確に分けることで、中高生にとっては質問しやすく、大学生にとっては議論を深めやすい議論の場作りをすると行ったことが考えられます。

 

今後の展望

今回からの試みとして、講演内容を書き起こしWebを通じて公開する準備を進めています。これにより、講演の成果を蓄積できるだけでなく、より多くの人が講演で積み上げられた知識に触れられるようになることを期待しています。また本プログラム履修生を含むリーディング大学院生の活発な活動の成果を一般社会に還元することにもつながると考えています。
また、さらなる将来像として、我々は、より多様な研究分野で活躍する院生に参加していただき、本イベントを10年、20年と長く続けていきたいと考えています。大学院生が分野の枠を超えて交流し、「知の横断」をする機会をもつことが、我が国の研究基盤を豊かにし、イノベーションの創出に繋がると強く信じているからです。「知の横断」という名の通り、本イベントが異分野間の繋がりを築いて維持し、さらには本プログラム履修生を含む多くの阪大生が自身の研究を社会に発信し還元していくためのプラットフォームとなることを目指して、これからも活動に取り組んでいきたいと考えています。

文責・島谷二郎(基礎工学研究科・3期生)

 

企画者の声

島谷二郎(基礎工学研究科・3期生)
前回(第1回)の反省を踏まえ、全体の講演時間を短縮するために講演者数を減らす、質疑応答の時間を長めに取る(休憩時間の増加、フリーディスカッションタイムの設定)といった工夫をした。これに対しては、聴衆からは好意的な意見が得られており、議論の密度を高め、本会の満足度をあげることに貢献できたと考えている。今回は100名を超える聴衆に参加していただくことができた。これは高大連携オフィスとも協力して行った広告活動がうまく機能した結果と考えられる。講演内容の難易度については高校生が理解できることを前提としており、これは講演者との密な相談を事前に行ったことで概ね達成できたと考えている。一方で、大学院生にとっては簡単過ぎる内容に終始してしまった講演もあったように感じた。全ての聴衆に分かりやすい発表を行うことは講演者の負担が大きいため、企画者らが過去の講演のデータを元に、想定される質問などを事前に講演者に伝えるなどすることで、そうした負担を軽減する必要が有ると感じた。

内田貴久(基礎工学研究科・4期生)
本企画は、中高生以上を対象とした、比較的ターゲットの広いものであった。このような広い範囲を対象とする企画のみならず、狭い範囲で多くの種類を用意し、そのターゲットにあった内容の企画をすることも面白いのではないかと思った。例えば、小学生・中高生・大学生・大学院生・大人などの細かなターゲットに対し、それに見合った内容で議論する機会など。

講演者の声

芝井厚(情報科学研究科・1期生)
主に高校生に向けて、自身の研究等について講演した。それ自体が貴重な経験であり、講演内容を考える過程でも新たな気づきが多くあった。かなり抽象的かつ科学の範疇を出たテーマについて話したので、うまく伝わったかはちょっと不安である。しかしながら積極的に多くの質問をしてもらい、議論しながら進めることができたのでその点ではありがたかったし、よい講演となったと思う。

参加者の声

小森隆弘(情報科学研究科・2期生)
知の横断の名にふさわしく、分野による考え方の違いがよく分かる内容となっていた。1人目は実験と理論という科学を支える両輪を分かりやすく解説しており、研究というものを一般の方に紹介する導入となっていた。二人目は未だ理論が実験を充分説明できるまでに至っていない分野での研究の進め方やモチベーションを紹介する一方、3人目は一通り個々の現象が説明できるようになった分野でいかにして包括的な理論を発展させていくかを議論していた。こうして分野ごとに異なる研究のアプローチをうまく網羅していたように思う。

酒谷 佳寛(情報科学研究科・2期生)
総じて、議論や講演の長さはちょうど良かった。運営もそつなくスムーズであり、きっと主催者の準備が良かったのだと思った。リーディング生として見倣うべきである。講演は、もう少しこの人の話を聞きたい、と思えるぎりぎりが40分なのだと感じた。もちろん今回の演者の方々が聴衆の気を惹くのが上手で魅力的なプレゼンをしていたおかげで、40分を名残惜しく感じられたのだろう。それは運営陣が演者の能力を正しく予期できたことを意味する。そして運営陣の演者の選定、事前の演者へのプレッシャーの掛け方や要求の仕方などが絶妙であったのではないかと想像する。

五島剛(情報科学研究科・4期生)
どの方の講演もとてもうまく作られていて、聞いていて楽しかったです。
ただ、講演の途中に質問してもよいという制度はあまり嬉しくなかったです。質問で中断されて講演に集中できませんでした。講演の時間と質問の時間をちゃんと分けるのがよいと思います。

志垣沙衣子(情報科学研究科・3期生)
今回の企画では、ヒューマンウェアイノベーション博士課程プログラム以外にも、阪大のリーディングプログラムのうちインタラクティブ物質科学・カデットプログラム、超域イノベーション博士課程プログラムから登壇者を招き、幅広い分野の話を聞かせていただいた。各登壇者の話の内容は、理論化学者の研究方法や、心理学という分野の奥深さなど、登壇者の専門分野についての話だった。学祭期間中の開催で中高生の参加者が多かったことから、登壇者の話し方は中高生にも分かりやすいようにということが非常に意識されていて、各登壇者の分野の魅力が中高生の世代にもよく伝わったことと思う。

村上雅哉(情報科学研究科・3期生)
私は当初「大学院生が喋るだけ」のイベントに本当に集客力があるのか、疑問と同時に不安を抱いていた。特に、今回は前回よりも登壇者が少なくなっていたため、なおのことである。しかしながら、蓋を開けてみると、100人を超える参加者があった。この背景には、徹底した広報活動が功を奏したことが理由として推測される。特に、今回は70を超える高校に対して宣伝活動を行なっていたが、7割近くの参加者が高校生であったことからも、その宣伝活動の効果が絶大であったことが伺い知れる。また今回、大学祭との併催に漕ぎつけた点も特筆すべきである。結果的に集客力の増加に繋がり、大学祭を目的に来た人にも、知の横断を目的に来た人にも、他方を副次的に有意義な機会として提供できたのではないだろうか。

大渕拓也(情報科学研究科・3期生)
想像していたよりも高校生からの質問が非常に多く、発表者と聞き手の間で双方向に発言があったので、議論が活発で時間があっという間に過ぎるように感じた。発表内容が中高生にも分かるように意識して作られていたこともあり、異分野の内容であっても最後まで興味を持ちつつ発表を聞くことができた。ただしその分、発表者自身が取り組んでいる研究内容や異分野における具体的な研究の推進方法に関する話が乏しく感じた。

中村達哉(情報科学研究科・1期生)
本企画は異分野交流を気軽に行うことを趣旨として開催されているが、第2回目となる今回で参加者が100名を超えており、講演者と気軽に議論することが難しくなっているようにも感じた。今後も参加者は増加していくものと予想されるため、どのような形式で会を開催していくかという大きな課題はあるものの、非常に有意義な会であり、学生自らが異分野連携を創出するという試みは今後とも継続されていくべきである。